ヘルスチェックシート
近年、スポーツ障害の発生を防ぐため、メディカルチェックの必要性が、認められてきていますが、これまでのメディカルチェックの内容は多岐にわたり、また医者が行うため、あまり普及しているとはいえません。
当院と大分県サッカー協会医事委員会では、現場の指導者が行う、ヘルス・チェック・シートを作成しました。これは、整形外科的メディカルチェックの結果をもとに、これを分析し、最小限必要と思われるチェック内容を簡潔にまとめたものです。
使用方法
●成長速度曲線
検査は、年4回、3ヶ月に1度施行してください。身長、体重を測定し、毎回の変化を下欄に記入します。
成長速度曲線には、それまでの毎年4月の、学校検診の身長の測定結果より、1年間の伸び(cm)を記入します。
●筋柔軟性
測定はヘルスチェックシート内右図のマニュアルにそって、施行してください。
(1) 立位体前屈の要領です。台の端に立ち、体を前屈させます。指先が台の床よりも下までいけば(+)とします。
(2) 膝を胸元に目一杯かかえこんだときの、反対膝のあがりをみます。
(3) 両膝とも曲がらないように注意。検者が下肢を挙上させてください。
(4) 検者が、軽く押して抵抗のあるところで測定。
(5) 膝を伸ばした位置で、検者が目一杯、足関節を押してください。
結果が、要注意にあたる子供には、ストレッチングを重点的に指導、次回までに改善するようにしてください。
●圧痛(押したときの痛み)
運動過負荷(オーバーワーク)を表す指標です。ヘルスチェックシート内右図に示した部位を検者が強く(自分の耳たぶを押して痛みを感じる程度に)押してください。痛みを訴えた場合(+)(R・Lを記入)とします。腰については、伸展、屈曲(そらす、まげる)させたときに、痛みを訴えた場合も(+)とします。足関節については、検者が内側外側に捻ってみて、不安定性を感じたり、痛みを訴えたときも(+)とします。 練習、試合中の痛みが強い場合、腰、脛骨粗面、足関節、肩、肘のいずれかでも痛みのある場合は、出来るだけスポーツ医への受診をすすめてください。出来れば、年1回のスポーツ医のメディカルチェックを受けることを、おすすめします。
解説
思春期は子供の成長、発達という点からみると、きわめて個人差の大きい時期です。スポーツ指導においては、暦の年令ばかりでなく、発達年令も考慮しなければなりません。その方法として、身長の成長速度曲線を評価するのが一番実際的です。右図を説明すると、phaseIであれば、基礎体力、調整力の養成に留意し、phaseIIは、身長(骨)が急速に伸びている時期なので、関節に大きな負担がかかる運動を避けながら、運動スキルの向上に努め、phaseIIIでは、本格的な筋力増強などのトレーニングを開始してよい時期に入ったと考えられ、phaseIVに達していれば、もう成熟の最終段階であり、体はほぼ成人と同じように考えてよいでしょう。
【引用文献】
村田 光範: | 日本人小児の発育発達の生理学的特徴-日中の比較から-.臨床スポーツ医学,Vol.5,No.9,:979-984,1988. |
大場 俊二: | 少年サッカー選手用ヘルスチェックシートの作成.臨床スポーツ医学. Vol. 17,No.3:370-376,2000. |
大場 俊二: | 成長期サッカーヘルスチェックシートの作成.サッカー医・科学研究. Vol. 20:110-113,2000. |
●筋柔軟性
筋肉は、発育期に骨の長軸方向への成長が著しいと相対的に短縮した状態となり、伸張性が低下します。また疲労した際、肉離れのような筋の損傷の後にも伸張性の低下が起こります。これは新たな筋の損傷の危険につながるため、経時的にチェックし、回復させるようにする必要があります。
98年度メディカルチェックの結果からも、この5つの筋肉の伸張性が低下した要注意群では、症状の発現において、正常群との間に有意の差が認められています。
●圧痛(押したときの痛み)
圧痛は、明らかな痛みを訴える前の段階でのチェックとして非常に有用です。これをもとに練習量、環境(グラウンド、シューズなど)各自のコンディションを把握するようにするとよいでしょう。サッカーの場合、スポーツ障害として後遺症につながる重要なものとしては、腰椎分離症(疲労骨折)、オスグッド病、足関節の傷害があげられます。この部位に圧痛がある場合は、慎重な対応が求められます。
プリントアウト
このヘルスチェックシートを多くの成長期スポーツの指導者に使用して頂き、子供の身体、成長度に理解を持って頂けるように、また子供達自身が健康管理に対する意識が芽生え、健全なスポーツライフを送ることが出来るよう心から願っています。
ぜひ、シート、使用方法・解説をプリントアウトし、ご使用してください。
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